結納の贈り方~戸川利郎

日本では、古くから婚約を印すものとして、男性側から仲人を通して女性側へ、末広(扇子)を贈るならわしがありました。

それが、現在の結納制度につながっていますが、結納には、どのような意味があり、どのように行なわれるものか考えてみましょう。

結納を贈ることは、結婚の申し込みであり、結納を受けることは、結婚を受諾することになります。

婚約を社会的にも、法律的にも、それなりの効果をもたせるためには、それを明確にするものがなければなりませんが、現在では結納制度が、その役割を果たしているわけです。

仲人が婚約成立の証人として、結納の取りかわしに一役買っています。

結納制度は、たんなる形式にすぎないというものではありません。

結納を取りかわすことによって、お互いにそれ以後の行動について、社会的、法律的権利や義務を新たにもつことになります。

ただ、この結納制度がしだいに簡略化され、いまでは、これにかわって、楽しいふんい気のなかでの婚約発表パーティー式のものがふえつつあります。

このことは、現代人として好ましいことです。

むかしの結納では、目録にある通りに柳樽やするめ、こんぶなど、すべて本物を取りそろえていましたが、現在では、ひじょうに簡略化され、一般には帯料とかはかま料(結納金)として金を包み、目録に添えています。

結納金額は、だいたい10~20万円といったところが平均です。

最近の傾向として、男性の月収の2か月分ぐらいをめやすに、結納金の額を決めるケースが目だちます。

結納金については、ひとむかし前までは、女性のしたく金という性格が濃厚で、その額によって、持参する調度品も考えられていたようですが、最近では、恋愛結婚が多くなり、お互いに、事前に経済程度も理解し合っていますので、男性の経済力の範囲内で、適度に結納金を贈り、半返しは、したりしなかったり、話し合いで決められているようです。


戸川利郎

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世話役の挙式当日の心得

会場へは1、2時間早めに到着して、当事者、司会者、受付係などと最終的な打ち合わせをします。

披露宴の準備に不備な点がないか、スケジュールに変更がないかなど、しっかりとチェックし
ておきます。

開宴が近づくと招待客が続々と到着します。

控え室のようすを見たり、必要に応じてクローク・ルームや化粧室への案内をしたり、会場の準備状況をチェックしたり、こまごまと注意を働かせるようにします。

披露宴が始まったら、必要に応じてすぐ行動できるように待機しながら、会場と招待客のようすに目を配っています。

また、司会者にとっても、会場側の係員にとっても、世話役は大事な連絡のパイプになるわけですから、つねにその所在を明らかにしておくことがたいせつです。

終宴後はその残務整理も、世話役の役目です。

新郎新婦や両親は緊張と興奮で、気もそぞろです。

忘れ物など気がつかないことも考えられますから、世話役が会場内を点検してから、帰っていく招待客を見送るように心がけます。

なお、結婚式、披露宴費用の支払いを、事前に当事者側から依頼された場合は、あとあと間違いがないように、請求明細書、領収書、残金などをよくチェックしておきます。

戸川利郎

媒酌人の服装〜戸川利郎

媒酌人夫妻の装いは、基本的には両親と同格になりますが、新郎新婦の衣装によって、それに準ずる装いを心がけます。

新郎新婦が主人公ですから、ふたりを引き立てるように、ひかえめに装います。

和装、洋装いずれの場合も、小物やアクセサリーに気をつかって、全体に新郎新婦よりひかえめにします。

特に媒酌人夫人が新婦とあまり年齢差がない場合は、新婦よりめだつことがないように、くれぐれも気をつけなければなりません。

五つ紋の羽織袴(紋服)が、媒酌人の正装になります。

紋服の場合は、同じ仙台平の袴でも無地にして、縞の袴を着用する新郎の紋服を引き立てるように配慮します。

モーニング・コート(夜ならタキシード)の場合は、チョッキやタイは、新郎よりひかえめなものにします。

チョッキは上着と共布にし(新郎は絹)、タイは新郎がアスコットなら黒白の結び下げに、新郎が黒白の結び下げならシルバー・グレーの結び下げにするなど工夫することで、新郎の装いを引き立てます。

新郎新婦が略礼装の場合は、媒酌人はブラック・スーツかダーク・スーツを心がけます。

これもワイシャツやタイで、新郎の装いに準ずる心づかいを見せ、新郎を引き立てるように装います。


戸川利郎

長寿の夫婦の渡り初め

渡り初めは、橋の開通式に初めてその橋を渡ること、またはその式典をいいますが、多くは高齢の夫婦者、または祖父母、父母、その子の夫婦と三組そろった一家族をえらびます。

新しい橋の開通は、その地域の住民にとって、きわめて大きな福祉ですが、夫も妻も長寿を保ち、開通式に招かれて、渡り初めを行なうということは、当人たちにとっても、さぞや絶大な喜びでありましょう。

この渡り初めは、かなり古くから行なわれていたと見えて、江戸の川柳(滑稽句)にも、
渡り初めすむと葬礼二つ行き(誹風柳多留)とあります。

渡り初めにえらばれて、近所の話題となった長寿者が、ぽっくり亡くなってまた話題となった、というほどの意味でしょうが、これをここにもってきたのはべつに他意はありません。

もともと川柳のことです。

ほかにちょっと適当な引用を思いつかなかったためです。

戸川利郎

赤いチャンチャンコと紫のふとん〜戸川利郎

本卦(還暦)には赤ん坊に返るという意味で、息子や娘たちが赤いチャンチャンコ(子どもの袖なし羽織)を、おジイさん、おバアさんに着せる習慣があって、昔のお年寄りは喜び、今の方は、年寄りあつかいにするな、とオコルとのことですが、土地によっては紫のフトンを贈ったりもします。

紫はひじょうに目立つ色ではありますが、ほとんど黒に近い色です。

ですから、お祝い事には紫は着ないともいわれていますが、赤外線と紫外線の中間色で、光の波長としては存在しないけれど、それだけに目にあたえる刺激は微妙で、ホルモンの分泌を促進させたり、神経を落ちつかせたり、周囲をなごやかにさせたりする色といってよさそうです。

紫のフトンに寝ると無病息災、長命延寿といわれるのも故あることで、紫雲たなびくところ、紫は高貴で上品な色とされ、高位のお坊さんは紫の袈裟をつけたりしています。

戸川利郎〜マナー講師